私は影。あの人の影。
意思など持つはずのない、主人の動きをまねるだけの黒い影。
の、はずだった。
特殊な魔力を与えられ……いや、きっとそれだけじゃないんだ。
なにかの偶然か、運命のいたずらか……私はこの世界に顕現した。
召喚されて間もない頃は混乱がひどく、当時のことはほとんど覚えてない。
けど、主人の隣にいた魔法使いの説明は少しだけ覚えてる。
曰く、私はただの影ではなく、闇属性の精霊を云々……
とにかく、私は「実体と自我をもつシャドーパートナー」というものらしい。
しばらくの間は、主人と魔法使いに、この世界での生き方と戦い方を学んだ。
私の能力は基本的に主人のものと同じ。
だから、戦闘に関する力は秀でていて、戦闘面のサポートは問題なかった。
私には非実体化という能力がある。幽霊のように消えて自在に動き回れるような便利なものじゃないけど……
いつでも主人の影に戻り、そしていつでも実体化できる。
これがとても便利だった。影から飛び出して相手を奇襲する。
正々堂々戦いたがる主人はあまり好まない戦法だったけど、幾度か窮地を脱することもあったのは事実。
この戦法を効果的に扱うため、私は身軽に動ける盗賊職を極めることになった。
実体化できるといっても、影は影。主人から遠く離れることはできない。
けど、世界の異変を調査する旅の途中で転機があった。
火の悪魔を召喚しようと目論む怪人がいた。
その阻止に動いたけど、激闘の末、召喚は果たされてしまった……。
その召喚の儀式の際、甚大なエネルギーを放つ供物から放たれる召喚の魔力の奔流を浴びたことで、召喚体である私も影響を受けた。一時的な召喚から脱し、制限なく世界に留まることができるようになったんだ。
私は影。あの人の影。
ただ、私は私自身でもあるようになった。
私は、主人の意思に縛られず、私の意志で運命を選択できるようになった。

※世界観設定は公式に沿ったものと捏造しまくっているものがごちゃ混ぜになっています。できる限り公式設定を活かしていますが、敢えて無視していることもあります
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