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Wishes come true once in a blue moon.

●とある盗賊の想起…
2022-06-13 Mon 00:14

私は影。あの人の影。

意思など持つはずのない、主人の動きをまねるだけの黒い影。

の、はずだった。

特殊な魔力を与えられ……いや、きっとそれだけじゃないんだ。

なにかの偶然か、運命のいたずらか……私はこの世界に顕現した。



召喚されて間もない頃は混乱がひどく、当時のことはほとんど覚えてない。

けど、主人の隣にいた魔法使いの説明は少しだけ覚えてる。

曰く、私はただの影ではなく、闇属性の精霊を云々……

とにかく、私は「実体と自我をもつシャドーパートナー」というものらしい。



しばらくの間は、主人と魔法使いに、この世界での生き方と戦い方を学んだ。

私の能力は基本的に主人のものと同じ。

だから、戦闘に関する力は秀でていて、戦闘面のサポートは問題なかった。

私には非実体化という能力がある。幽霊のように消えて自在に動き回れるような便利なものじゃないけど……

いつでも主人の影に戻り、そしていつでも実体化できる。

これがとても便利だった。影から飛び出して相手を奇襲する。

正々堂々戦いたがる主人はあまり好まない戦法だったけど、幾度か窮地を脱することもあったのは事実。

この戦法を効果的に扱うため、私は身軽に動ける盗賊職を極めることになった。



実体化できるといっても、影は影。主人から遠く離れることはできない。

けど、世界の異変を調査する旅の途中で転機があった。



火の悪魔を召喚しようと目論む怪人がいた。

その阻止に動いたけど、激闘の末、召喚は果たされてしまった……。

その召喚の儀式の際、甚大なエネルギーを放つ供物から放たれる召喚の魔力の奔流を浴びたことで、召喚体である私も影響を受けた。一時的な召喚から脱し、制限なく世界に留まることができるようになったんだ。



私は影。あの人の影。

ただ、私は私自身でもあるようになった。

私は、主人の意思に縛られず、私の意志で運命を選択できるようになった。



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※世界観設定は公式に沿ったものと捏造しまくっているものがごちゃ混ぜになっています。できる限り公式設定を活かしていますが、敢えて無視していることもあります

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●とある戦士の記憶…
2022-06-11 Sat 09:15

この世界に存在する冒険家は2種類に分けられる。

1つは、元々この世界の住民で、大半を占めるもの。

もう1つは、極少数の、別の世界からやってきたもの。



数百年前、この世界で大きな戦いが起こった。暗黒の魔法使いとの戦争だ。

圧倒的な力を持つ敵に対し、先頭に立って連合軍を率いた5人の英雄達がいた。

英雄達は死力を尽くし、なんとか暗黒の魔法使いの封印を果たした。

その英雄達の頭文字をとって、MAPLE……

本来、その一人は『E』ではなく『F』なのだが、『F』はこういったそうだ。

「みんなが忘れている一人がいる。その一人を足して、『E』だ」

そして、平和になった世界を象徴するものとして、もみじの木が大陸の外れの小さな島に植えられた。



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もみじの木が立派に成長した頃から、時々この木の元にどこからともなく人が現れるようになった。

彼らは皆、多かれ少なかれ別の世界の記憶を持っている。

それは彼らが本来いた世界の記憶で、気が付いたらこの世界にいたというのだ。

様々な調査の末に、彼らは”完全に排除されたわけではない世界の脅威に対抗するための力として、この世界そのものが別世界から呼び寄せた勇者”という結論に至った。

実際、彼らのもつ知識は世界の発展に貢献し、多くの別世界出身の冒険者が名をあげたり、街や文明・技術の発展に貢献した。

ビクトリアアイランドのカニングシティーや地下鉄等が分かりやすい例だろう。

他の地域と比べ、異質と思える文化の多くはそうやってもたらされた。

そういった経緯があり、この木の周りには『初心者』を安全に、冒険家達の指導機関が存在するビクトリアアイランドまで送り届けるための支援を行うための町がつくられた。

そして、別世界が存在するのであれば、区別の為に自分達の世界に名前をつけようという流れになり、先の戦いの英雄達の名をとってこの世界をメイプルワールドと呼ぶようになった。



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俺には元の世界の記憶がなかった。しかしこの木の元に現れた内の一人だ。

俺が持っていた最も古い記憶は、真っ暗な闇の中、鎖が絡んだ扉の先から溢れる光。

そして、多くの人達の声……祈り。



第一次暗黒対戦後、俺は他の仲間達とともにエリンの森へやってきた。

戦禍に見舞われたオシリア大陸から、新天地を求めて避難してきた妖精族と人間の一団の一人として。



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妖精にはいくつかの種類がある。

エルフ。長命で、人間より整った外見をしている翼のない種族だ。元々エリン森の近くに街を作り暮らしており、外に出ることは珍しいものの、人間とは友好的だ。

シルフ。エリン森に住んでいる、小さな半透明の翼をもつ小柄で比較的短命な種族だ。彼女らはあまり友好的ではない。

ニンフ。オルビスに住む、天使のような外見の長命な種族だ。彼女らはシルフよりは友好的といえるだろう。

シルフに似た種族にフェアリーがいるが、これは蝶のような羽をもっている。敵対的な種族だ。



俺は人間とエルフの混血で、ハーフエルフに分類される。



避難民の指導者達とともに長い年月をかけてビクトリアアイランドを整備し、冒険家を導く礎も完成した後、俺は平和なようにみえて様々な異変が生じ始めている世界を旅した。

各地で発見される闇の勢力の残滓を処理したり、様々な問題解決にも尽力したことで、現代において第一級の冒険家として認知されることとなった。

そしてその功績が認められ、時が過ぎ復活を果たした暗黒の魔法使いに対抗する連合軍の中心人物として抜擢された。



俺は負けた。

暗黒の魔法使いの圧倒的な力の前に、成す術なく敗れた。

他の英雄達や別世界の勇者達とも力を合わせたが、彼には手も足もでなかった。



暗黒の魔法使いは、因果律の束を自ら壊しては繋ぎ、無数の未来の束を創造しては除去し、そうやって、いくつもの運命が枝分かれした未来そのものを、掌の中に収めていた。

我々は、彼が決めた未来、創世の道の上に導かれていた。

……勝てない。



連合軍は破れ、このままでは世界は消滅してしまう。

絶望に包まれる中、メイプルワールドの女神の声が響いた。

「あなたを過去に戻します。どうか、その先の世界を救ってください」

女神の力が、時間の超越者の権能が、龍の英雄の魔法が、病弱な女王の祈りが、そして戦場の勇者達の願いが俺の元に集まり、記憶と力を維持した状態での時間遡行が始まった。



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だが……暗黒の魔法使いは自身の真の脅威となるものを見逃しはしなかった。

遡行する俺に彼の概念の鎖が伸び、捕らえ、逃がさんとする。

抵抗したが、遡行が終わった頃にはもう、力も記憶もほとんど失いかけていた。

目の前にあるのは光の扉。逃がすまいと鎖が絡みつき、閉ざそうとしている。

逃げねば……急いで向こうへ……



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身体に染みついた技術はそう簡単に抜けないらしい。

力も記憶も失ってしまったが、低級の冒険家の時代から、他とは一線を画していた。

それに、1周目と明らかに違うことがあった。俺は旅の途中で多くの仲間と出会った。

他の魔法使いを圧倒する、様々な分野に精通しているシルフ

人間でありながら、獣の力をその身に宿された娘

銃を好む風変りなニンフ

そして、分身である■■■■■

仲間と共に世界を旅し、各地で発見される闇の勢力の残滓を処理したり、様々な問題解決にも尽力した。

その結果、未来の記憶がないままに、2周目の俺も名のある冒険家となり、連合のエースとして期待されることとなった。



アーケインリバーで、俺は俺そっくりな青年から、忘れていた記憶の一部と使命を与えられた。



彼は、俺がこの時間軸――暗黒の魔法使いが復活の兆しを見せる数年前――に戻されたときに本来存在していた俺自身だ。

暗黒の魔法使いから逃げる際、奪われかけた力と記憶を女神によってなんとか彼に繋ぎ止められた。

これならば、遡行してきた俺と本来の俺が出会い、同化することで力と記憶を取り戻すことができる……

しかし女神にとって誤算だったのは、未来の記憶が流れ込んだ衝撃と、暗黒の魔法使いの攻撃の波及を受けた彼が倒れ、記憶喪失となったこと。

俺が本格的に世界を旅し始めた頃で、俺を知る/覚えている者はほとんどいなくなっており、時間の神殿で倒れていた俺が何者なのか、不明なままとなってしまった。

これにより、同化は遅れ、また完全な同化を果たすことができなかった。

しかし……不完全でも、俺は自分が何者なのかを知ることができた。

消滅する彼を見送りながら、戦いへの決意を固める。



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俺がすべき正しい選択とは。

あの時、俺は■■■/■■■■を楽にしてやるつもりだった。

しかし■■■■■は違った。全て助けたい、と。

俺は直感を信じた。これこそが、運命を変える選択なのだと。

俺の選択こそが敗北の道。

ならば、勝つための選択は……



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暗黒の魔法使いは強大なアーケインフォースで守られていた。

アーケインリバーの最奥で莫大なエルダを取り込み、その姿と力はもはや神と称するに相応しいものとなっていた。



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俺一人の力ではこの守りを突破できなかった。

他の誰と力を合わせてもそうだ。

アーケインフォースは、他者と共有して強化できる力ではないのだ。

しかし、■■■■■ならば。彼女は俺の分身。見た目は全く違っても、彼女は俺自身なのだ。

彼女となら、奴の守りを突破することができる。

正しい選択をするため。

そして神を堕とすため。

彼女は、そのためにこの世界に呼び出されたのだ。



1周目の俺が果たせなかった使命を、今ここで。

今こそ運命を切り拓いてみせる――



※世界観設定は公式に沿ったものと捏造しまくっているものがごちゃ混ぜになっています。できる限り公式設定を活かしていますが、敢えて無視していることもあります

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●とある超越者の回顧…
2022-06-09 Thu 00:02

どれだけ運命を見つめ直しても、結末を変えることはできませんでした。

最後の戦いで、対敵者は正しい選択ができなかったのです。

ですが、それは彼のせいではありません。



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時間の超越者は過去や未来を見通し、時間を操り、運命を握る力を持ちます。

しかし、暗黒の魔法使いの力は私を遥かに上回っていました。

彼は膨大な時間や人々の運命すらをも見通し、巧妙にその魔の手を張り巡らし、彼に敵対するはずだった者達を仲間に引き入れ、時には排除し、彼が敗北する運命に連なる道を悉く潰していきました。

そして私自身も闇の勢力に封じられ、時間の力の大半を奪われてしまいました。



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このままでは超越者の力の均衡が崩れ、世界のバランスも崩れてしまいます。

私が見通す未来では、どうやっても暗黒の魔法使いに打ち勝つことができませんでした。

そこで、文字通り視点を変えてみることにしたのです。

私とは違う未来を見つめ、新たな運命を創り出すため、封印される前に新たな超越者となる後継者を創り出しました。

……しかしそんなことが見逃されるはずもなく、後継者もまた、闇の勢力の手に堕ちてしまいました。



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私には運命を変えることはできませんでした。

しかし、後継者は、闇の勢力のもとでずっと戦い続けていました。

蜘蛛の王が支配する偽りの世界の中で、記憶を操作され、飼い殺しにされていてもなお、完全に敵の手に堕ちることはなかったのです。



時間の超越者は不滅者と呼ばれる存在であり、完全に消滅させることはできません。

また、後継者は超越者として覚醒を果たしていないものの、充分脅威となる力をもっていました。

そこで、蜘蛛の王は後継者を倒すのではなく、記憶を奪い、自身の鏡の力で2つの個体に分裂させ、力を半減させた上で懐柔することを試みました。



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後継者は、偽りの世界の中で偽りの使命のために戦い続けました。

その中で徐々に真実に気付き、ついに封じられているもう一方の個体を発見しますが……

そこで蜘蛛の王に敗れ、記憶を消されてしまいます。



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それが、8回。

抜け出すことができないかと思われた繰り返される偽りの世界で、忘れてしまった友に導かれ、9度目の彼は遂に自身の片割れを目覚めさせ、蜘蛛の王の支配から逃れたのです。



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私を封じ込める水晶の中で、私はずっと後継者、そして対敵者を見続けていました。

後継者が自身の片割れを目覚めさせた時、対敵者が自身の分身を生み出しました。

いえ、もしかしたら逆かもしれません。

どちらのきっかけが先だったのか……いずれにせよ、その時。

敗北以外の道を排除されていた世界の運命と未来が、対敵者の選択肢が、二つに分かれました。

一つは……やはり、従来通りの敗北の道。

もう一つは……先を見通せない、か細くて儚い、どんな結果が待っているか分からない道。

それでも……ついに現れた可能性。

その可能性は少女の形をしていました。

後継者は、それをベータと、

対敵者は、それを■■■■■と、

呼びました。



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暗黒の魔法使いは、敵対する者達に関しては徹底的に運命操作を試みていました。

9回目のサイクルで、後継者が偽りの世界を打ち破ることも見通していたようですが……

しかし、その瞬間に新たな運命が切り拓かれることは想定外だったようです。




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●とある銃使いの追想…
2022-06-07 Tue 00:02

私は生まれつき魔力が少なかったんです。

オルビス出身の妖精なのに……こんなことは滅多にないんだって。



得意なことは空を飛ぶこと。

苦手なことはそれ以外。

魔力がないし力もない。目立って突出した技術もない。

妖精の世界では落ちこぼれでした。



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オルビスはオシリア大陸の上空にある空中都市です。

世界各地への交通の拠点となっているので、商人や旅人等、様々な人達がやってきます。

特に旅人。

冒険家と呼ばれている彼らは、みんな多種多様な格好をしていました。

かっこいい鎧武器に身を包んだ戦士。いかにもな感じのローブを纏い杖を携えた魔法使い。

身長ほどもある大きな弓を構える弓使い。ナイフや手裏剣を器用に扱う盗賊。



街中で見かける彼らの姿は憧れでした。自分の力で自由に世界を旅できるなんて羨ましい。

私もオルビスを出て、ビクトリアアイランドに行って4賢者に従事してみようかと考えたこともあります。

でも、ただでさえダメダメな私が外の世界でやっていけるんだろうか、という不安が強く行動に移せずにいました。

剣はダメ。非力な私には扱えません。

魔法もダメ。魔力が少ないから困っているんです。

その他も、なかなかしっくりこないものです。



そんな日が何年も続いた頃……

オルビスのさらに上空にある巨人の島・クリセに行きたいという冒険家さん達がやってきて、私が彼らを案内することになりました。

他の妖精達は粗雑な巨人の近くにはあんまり近づきたがらないので、他にすることもない私が「道案内くらいはできるでしょ?」ということで抜擢されたわけです。

ですが、これが私にとっての転機でした。



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案内していた冒険家さんたちが持っていたものの中に、見慣れないものがありました。

それが『銃』です。

当時、長く離れていたもう一人の賢者がビクトリアアイランドに戻ってきたそうで、「海賊」の指導を始めたらしいです。

その海賊としての戦い方の一つが、銃を扱う銃使いだというわけです。



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それで……銃をみて驚きました。

だって、あんな小さな筒の先から火を噴けるんですよ。

しかも魔力のない人間でも。指先を少し動かすだけで。

力がなくても遠くを矢のように狙えるし、盗賊のように器用じゃなくても大丈夫。

もちろん、本当は火の玉ではなく銃弾です。でも、私には魔法のようにみえました。

どうして私には魔力がないんだ、ってずっと抱えていた劣等感が吹き飛びました。

これがあれば、魔力がなくったって『魔法』を使えるんだ。

そうしてすぐに、銃の虜になってしまいました。



クリセで彼らの仕事をお手伝いしながら、銃のことを色々聞きました。

彼らのなかに銃を上手く扱える人はいなかったけど、急に熱くなり始めた私の話をきちんと聞いてくれて、賢者様に紹介してくれることになりました。

海賊さん達も、最初は「珍しいお客さんだ」ってびっくりしていましたけど、温かく迎え入れてくれて、本当に感謝しています。



こうして、空の上から海の上へとステージを変え、私の旅も始まったのです。




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●とある弓使いの回想…
2022-06-05 Sun 00:02

気が付いた時、私は薄暗い研究所の培養槽の中にいた。

場所の検討はすぐについたわ。

ここはブラックウィングのアジト。ゲリーメルの研究所。



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――鉱山に近づいてはいけない――

これはエーデルシュタインに生きる全ての市民の共通認識。

何故なら、男・女・子供・大人……少なくない数の市民が、鉱山の傍で行方不明になっていたから。

ブラックウィングが市民を攫っている。そんな噂はすぐに広まった。証拠はないけど、確信はある。

もちろん私も気を付けていた、けど……

あのときも子供が一人いなくなったの。



色んなものが置いてある鉱山の近くは、子供達にとっては魅惑の遊び場。

禁止されていた鉱山でかくれんぼをしていた子供達の一人が、いつまで経っても出てこない。

どうしようどうしよう、怒られるから大人には言えない……と、子供達は泣きながら、よく遊び相手になっていた皆の頼れるお姉さんの私に助けを求めてきた。

子供達が怒られようとも大人達に事情を説明すべきだったんだけど、あの時は愚かにも私一人で探しに行って……

そして私も失踪した。



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そこは人体実験の現場だったわ。

その時に行われていた実験は、人に動物の外見や能力を移植できるか、というもの。

ブラックウィングの首領は兎が好きらしく、「部下を兎のような外見にできれば可愛いくない?」と無茶振りをしたみたい。

で、私達はその最初の実験台。

結果は……成功半分、失敗半分、ってところかしら。

見た目はそのまま。でもそれぞれが実験動物の特徴の一部を受け継いだ。そうね、例えば感覚が鋭くなったとか、夜目が少し利くとか。跳躍力はイマイチね。

首領はこの結果に不満だったようだけど、ゲリーメルは可能性を感じて満足したようよ。

その後も実験を続け、私達には兎以外にもいろんな動物や魔獣の能力を移植されたわ。

……あんまりいいものじゃないから皆には隠してるけどね。

そしてその成果をもとに、幹部たちは様々な身体強化を施されたみたいね。

もちろん、首領の求める結果も出せたみたいで、だからブラックウィングの下っ端には兎人間が多いのよ。



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そうしてそれなりの月日が流れ、しぶとく人体実験に耐えていた私も遂に限界を迎えそうだった。

ゲリーメルがアンドロイドの研究に本格的に着手したこともあり、用済みの私は処分されそうになったんだけど……

そんなときに、ブラックウィングの内部潜入調査を行っていたマスター達に救い出されたってわけ。

その後しばらくの間、レジスタンス組織で色々とお世話になったあと、私は彼らに合流したわ。



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いつも文句言ってばかりだけど、これでもちゃんと恩を感じてるんだから。




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●とある魔法使いの追憶…
2022-06-03 Fri 00:02

あの二人との出会いは500年前。

エリン森と呼ばれていた深い森の中で、他の妖精や大陸から逃れてきた開拓者達と距離を取り、私はずっと一人で魔法を研究していた。

そんなある時、彼らが私の前に現れた。

見慣れない姿の彼らは、初対面のはずの私の姿を見ると、私の名を呼びとても安堵した様子で助けを求めてきた。

「ルディブリアムに行きたい」

私が転移魔法を使えば、それくらいは容易いこと。でも、私達は初対面。

少なくとも私には、こんな二人と会った記憶はなかった。



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正体不明の誰かに簡単に手を差し伸べる程、私は優しくない。

しかし…少し気になるものがあった。彼らが一つずつ身につけている、欠けた月を象った青いイヤリングだ。

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かなりの魔力が込められているようだけど、問題なのはその性質。

イヤリングから感じられる魔力が、何故だか私の魔力に似ていた。

これまでにも、宝飾品に魔力を込めて特殊なマジックアイテムを作製したことはあった。

けれど、目の前の彼らが持つものには見覚えがなかった。そして悔しいことに…恐らくこの魔力を込めた魔法使いは私より強力だ。

彼らを追い払うことは簡単だろうけど、どうしても気になったのも事実だった。

彼らは何者なのか。目的は何なのか。どうしてそんなものをもっているのか。その魔力の主は誰なのか。

何故私のことを知っているのか。

気になる。だから彼らに条件を提示した。



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あの頃、森は突如発生した毒の霧に蝕まれ続けていた。

独自調査の結果、闇の魔術の研究を行っている者が森に潜み、毒霧を作りだしていることを先日突き止めた。

私一人で対処するつもりだったけど、彼らに魔術師の討伐を依頼した。

もちろん、私の手にかかればこの程度は余裕。でも、この二人の実力を見極める良い判断材料になるだろうと思ったからだ。

結果は、予想以上に上々なもの。

二人は難なく魔術師……は既に森を去っており、遺していた毒を撒き散らすゴーレムを退治してみせた。おそらく徐々に毒霧は収まっていくだろう。

実力は問題なし。

一方で、彼らは私の疑問にはほとんど答えてくれなかった。答えたくても答えられないといった様子か。

でも、傍で彼らの様子をみていれば事情を察することができた。魔法や世界の仕組みをよく知る私だからこそだけど。

恐らく……彼らは時間旅行者だ。何らかの事情があり、この時代にやってきたとみえる。

時間旅行というものは非常に繊細で複雑なものだから、現地人との接触には注意するよう教えられていたとしても不思議はない。

……いきなり私の名前を呼んできたけど。

まぁきっと、何らかのトラブルで本来の目的地とは別の場所、もしくは時間帯、あるいはその両方に着地してしまい、困っていた……

そんな時に元の時代(未来だろう)で面識のある――彼らの態度から察するに、私と彼らはかなり親密な仲のようだ……信じられないけど――私をみつけて安堵と油断から思わずルールを破ってしまった。そんなところだろう。

……彼らに事件を解決させてしまったが、彼らがいなくとも解決できたことなので、歴史に影響はないだろう。

とにかく。そうだと仮定すれば、彼らは彼らなりに誠実な対応をしていたということだ。

精神性も問題なし。

時間旅行を悪用するような者たちではないだろう。彼らは信用するに足ると判断した。

結局、私は二人の意を酌み、何も知らない・気付いていないふりをして黙っておくことにした。

どうせいつかまた会うはずなのだから、その時に話してあげよう。

そうして約束通り、二人をルディブリアムへ転移させたのだった。



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500年後……私と彼は氷の谷で再開した。

今度は逆に、あちらが初対面の反応をみせた。当然だ。私はまだ、あれから彼に出会っていなかったのだから。

彼は突然空から現れた私に警戒していた。一方の私は、柄にもなく少しわくわくしていた。

なにせ、いつ会えるのだろうと待ちに待ち続けていた人物にようやく会えたのだ。

さて、どうやって警戒を解こう。あの時、去り際。彼らは何と言ってたかな……

あぁ、そうだ。何百歳も年上の私に対し、生意気にも「笑顔の方がかわいいよ」と。

私は誰にでも笑顔を振りまくような質ではないのだけど、彼らの知る、『今』の私はそうなのだ。

なら演じて見せよう。それに、笑顔の方が多少は警戒もほぐれるだろう。

そうして第一声。「お久しぶりですね~♪」

……こんな声出せるんだ、私。



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彼と話をした。彼の旅の目的、私の今の旅の目的。

どちらも当時、世界各地で生じていた異変の調査だ。

モンスターの狂暴化、時空間の歪み、異常気象、ルダスレイクの汚染……世界では、ここ数年で大小様々な異変が起きていた。

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彼は喜んでいた。異変は気のせいではなかったのだと。他にも調べている人がいたんだ、と。

私も内心で喜んだ。やはり私の判断は正しかった。彼は旅を楽しむ冒険者としての立場に留まらず、世界の為に戦う善の者。思わず頬が緩んだ。

そうして話すうちに彼の警戒は完全に溶けた。私の実力を認め、慕ってくれる。

初対面なのに久しぶりと言ったことにはずっと不思議そうな様子だったが、これは500年前の意趣返しだ。

それにどうやら、あの時のことは話すべきではない。彼は自身が時間旅行することになるとは微塵も思い至っていないようだった。

そう。時間旅行というものは繊細で複雑なのだ。知らない者に余計な事を言ってはいけない。



過去の彼にあって、今の彼にないものがある。

欠けた月を象った青いイヤリング。そして、傍らに立つ少女の姿。

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しばらく共に世界を廻りながら探りを入れてみたが、どちらも彼には心当たりがないようだ。

ずっと一人で旅を続けている、と彼は言った。

どういうことだろう……しばらく考え、一つの結論に至った。

きっとあのイヤリングは私が彼に贈ったのだ。ならば私の魔力に似ていて当然。500年経っているのだから実力も上で当然。単純なことだ。

では、どうしてそんなものを彼に贈ったのか。

500年前に調べさせてもらった時の記憶が正しいなら、あのイヤリングは召喚の石を素に作られていたはず。

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  召喚の石は、文字通り召喚関連の魔術に用いられる素材である。

  ドラゴンや鷹などの召喚獣を召喚する際に用いられていた。

  そして他には、シャドーパートナーというスキルにも用いられた。共に戦う影の分身を召喚するというわけだ。

なるほど、私は私の意図を推し図る。

そう。私は初めての友人のことが心配だったのだ。

500年の間で、人間達は過去の出来事をほとんど忘れてしまっているが、この世界は現代人が考えている以上に危険が多い。

それに、今世界で生じている異変が人為的なものであるなら、調査を続けることには更なる危険がつきまとうだろう。

でも、私がついていればきっと大丈夫だ。だって私は今やこの世界でトップクラスの力を持つ魔法使いなのだから……

しかし、私はこれから先もずっと彼の傍にいられるのだろうか?

彼はどうして過去に飛んだ?どうしてあの時、傍に私がいなかった?

……事情はわからない。でも、私はずっと傍にいられるとは限らないのだ。

ならば……私の代わりに彼を助け守る存在が必要だ。それでシャドーパートナーの登場というわけか。

問題はある。彼は戦士の道を究めんとしており、盗賊のスキルであるシャドーパートナーを扱うことはできない。

しかし、私なら可能にできる。いや、できたのだ。だって彼はパートナーを連れていたのだから。

  ……そう。彼女はきっと、シャドーパートナー。何故か実体を得てしまっただけの。

  私はあくまでも、シャドーパートナーというスキルを扱えるようにしただけのつもりだ。

  そもそも、さすがの私でも新たな命を魔法で生み出すことはできない。

そうして私は彼に、欠けた月を象った青いイヤリングを贈った。

  彼女は確かに実体をもっていた。今に至るまで全くそのような存在だと気付かなかったほどに、確かに。

  当時の私が未熟だったのか、それほどまでに確固たる存在として確立していたのか。

  今はまだわからない。だけど、きっとすぐにわかるだろう……

彼の拙い魔力でも使用できるように、たっぷりと私の魔力を込めて、いつでも分身を生み出せるように。

  何故そんなことが起きたのか。理由はわからない。

  もしかしたら、500年前に彼女の姿をみたことが影響しているのかもしれない。

  でもそんなこと関係ない。だって、何故だろう、彼に力を与えることが私の使命だと思ったから。

  ならそれでいい。タイムパラドックスなんて関係ない。

こうして、早速イヤリングに触れてスキルを試してみた彼の元に、ただ影の分身を生み出すつもりだった彼の元に、

この世界に、

彼女が、人の姿をもって顕現した。

これが世界の運命が分かれた瞬間だったとは、さすがの私も思い至らなかった。




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